銘柄・更新 2026-11-02
三大和牛とは?神戸牛・松阪牛・近江牛・米沢牛の4銘柄の条件の違い

「三大和牛」と聞くと、国が選んだ3つの銘柄があるように感じるかもしれません。けれども、農林水産省の地理的表示(GI)の登録産品一覧や、各銘柄の GI 明細書を確かめても、「三大和牛」を定義した文書は見つかりませんでした。この記事では、三つ目の銘柄が資料によって違うことを確かめたうえで、よく名前が挙がる神戸ビーフ・松阪牛・近江牛・米沢牛の4銘柄について、条件を表で比べます。味の優劣は扱わず、決まりごとと歴史、買える場所の探し方だけをまとめました。
この記事のポイント
- 「三大和牛」を定義した国や業界団体の文書は、農林水産省の GI 関連資料などを確かめても見つかりませんでした(2026年11月確認)。
- 観光庁の多言語解説文データベースは近江牛を、米沢牛の GI 明細書は米沢牛を「日本三大和牛」として紹介しており、三つ目は資料によって違います。
- 4銘柄はすべて黒毛和種で、GI 登録は神戸ビーフが第3号(2015年12月22日)、特産松阪牛が第25号・米沢牛が第26号(2017年3月3日)、近江牛が第56号(2017年12月15日)です。
- 肉質等級の条件は神戸ビーフが4等級以上(BMS No.6以上)、米沢牛が3等級以上で、松阪牛と近江牛の GI には等級の条件がありません。
- 性別は神戸ビーフが未経産雌牛と去勢牛、松阪牛と米沢牛が未経産雌牛だけ、近江牛は GI 明細書に性別の条件がありません。
三大和牛とは?公式の定義は見つかっていません
三大和牛は、よく知られた和牛の銘柄を3つまとめて呼ぶ言い方です。ただし、どの3つかを決めた公式の定義は、このサイトが調べた範囲では見つかっていません。
銘柄牛の条件を国が確かめる仕組みとしては、農林水産省の地理的表示(GI)保護制度があります。GI では、銘柄ごとに生産地や生産の方法を書いた「明細書」が登録されます。しかし、GI の登録産品一覧(令和8年7月10日現在)にも、明細書にも、銘柄を3つに絞る区分はありません。
「どの団体も決めていない」と言い切ることはできませんが、少なくとも国の制度や、各銘柄の協議会の定義には「三大和牛」という枠は出てきません。広告や観光案内で使われている呼び名、と受け止めておくのが安全です。

このサイトでの扱い
このサイトでは「三大和牛」を順位や品質の保証としては扱いません。銘柄の条件は、協議会の定義と GI 明細書の値をそのまま載せています。
三大和牛に入る銘柄は?神戸・松阪と近江か米沢
神戸ビーフ(神戸牛)と松阪牛の2つは、ほとんどの資料で共通しています。三つ目には近江牛を入れる言い方と、米沢牛を入れる言い方があります。
公的な資料でも、この揺れはそのまま見えます。観光庁の「地域観光資源の多言語解説文データベース」にある近江牛の解説文(日本語版)は、近江牛を神戸牛・松阪牛と並ぶ日本三大和牛の一つとして紹介しています。一方、米沢牛の GI 明細書は、社会的評価の欄で米沢牛について「しばしば日本三大和牛と称される」と書いています。
どちらも、それぞれの銘柄を紹介する文の中で使われている表現です。三大和牛を決める手続きや基準を示したものではありません。そのため「三大和牛 米沢牛」「三大和牛 近江牛」のどちらの言い方も、間違いとは言えません。
記事や商品で「三大和牛」と書かれているときは、どの3銘柄を指しているのかを本文で確かめると、読み違いを防げます。この記事では、どちらの言い方にも対応できるよう、近江牛と米沢牛の両方を含む4銘柄をまとめて比べます。
- 神戸ビーフ(兵庫県):ほぼすべての言い方に入る
- 松阪牛(三重県):ほぼすべての言い方に入る
- 近江牛(滋賀県):観光庁の多言語解説文などで三大和牛の一つとして紹介
- 米沢牛(山形県):GI 明細書の社会的評価の欄で日本三大和牛と称されると記載
三大和牛の違いは?4銘柄の条件を比べる
4銘柄はどれも黒毛和種(くろげわしゅ)の牛です。違いが出るのは、性別、育てる場所と期間、格付の条件、そして GI に登録されている名前です。
下の表は、このサイトの銘柄データ(GI 明細書と協議会の定義をもとに2026年11月に確認)の値をそのまま並べたものです。「条件なし」は、その項目の決まりが GI 明細書や協議会の定義に書かれていないという意味です。
| 銘柄 | 品種 | 性別 | 肥育地 | 期間・月齢 |
|---|---|---|---|---|
| 神戸ビーフ | 黒毛和種(但馬牛) | 未経産雌牛・去勢牛 | 兵庫県内 | 生後28〜60か月齢 |
| 松阪牛 | 黒毛和種 | 未経産雌牛 | 松阪牛生産区域(旧22市町村) | 12か月齢までに導入、区域で最長・最終 |
| 近江牛 | 黒毛和種 | 条件なし | 滋賀県内 | 県内で最長・最終 |
| 米沢牛 | 黒毛和種 | 未経産雌牛 | 置賜地域(3市5町) | 地域で最長・最終、33か月以上 |
格付・BMS・GIの条件
肉の格付は、日本食肉格付協会の規格で決まる歩留(ぶどまり)等級と肉質等級で表します。歩留は1頭から取れる肉の割合、肉質等級は霜降りや色などをまとめた5段階の評価です。BMS は霜降りの度合いを12段階で示す数字です。
表のとおり、格付の数字を条件にしているのは神戸ビーフと米沢牛だけです。神戸ビーフはさらに、枝肉重量を499.9kg以下(下限は未経産雌牛270kg・去勢牛300kg)とし、兵庫県内の食肉センターでと畜することも定めています。
| 銘柄 | 等級の条件 | BMSの条件 | GI番号 | GI登録日 |
|---|---|---|---|---|
| 神戸ビーフ | 歩留A・B、肉質4以上 | No.6以上 | 第3号 | 2015年12月22日 |
| 松阪牛 | 条件なし | 条件なし | 第25号(特産松阪牛) | 2017年3月3日 |
| 近江牛 | GIは条件なし(認定近江牛はA4・B4以上) | 条件なし | 第56号 | 2017年12月15日 |
| 米沢牛 | 肉質3以上 | 条件なし | 第26号 | 2017年3月3日 |
等級の条件がないのは決め方の違い
松阪牛と近江牛の GI に等級の条件がないのは、決め方の違いです。近江牛は協議会が A4・B4 以上などを満たしたものを「認定近江牛」として別に認定しています。
神戸牛と松阪牛の違いは?
神戸牛(神戸ビーフ)と松阪牛のいちばん大きな違いは、決まりの中心が「格付の基準」か「育てる場所と期間」かという点です。
神戸ビーフは、兵庫県の但馬牛(たじまうし)を素牛(もとうし=肥育に使う子牛)にして兵庫県内で肥育した牛のうち、歩留A・B、肉質4等級以上、BMS No.6以上、枝肉重量499.9kg以下などを満たしたものです。GI には「神戸ビーフ」「神戸肉」「神戸牛」「KOBE BEEF」の4つの名称が登録されています。
松阪牛は、松阪牛個体識別管理システムに登録された黒毛和種の未経産雌牛で、旧22市町村の松阪牛生産区域での肥育期間が最も長く、最後に肥育された牛です。等級や BMS の条件はありません。子牛は兵庫県・宮崎県・鹿児島県など全国の市場から導入されます。
- 性別:神戸ビーフは未経産雌牛と去勢牛、松阪牛は未経産雌牛だけ
- 子牛の産地:神戸ビーフは但馬牛に限る。松阪牛は条件なし(特産松阪牛は兵庫県生まれ)
- 格付:神戸ビーフは肉質4等級以上・BMS No.6以上。松阪牛は条件なし
- GI の名前:神戸ビーフはそのまま登録。松阪牛は「特産松阪牛」だけが登録
「松阪牛」と「特産松阪牛」は別の範囲
GI に登録されているのは、松阪牛のうち「特産松阪牛」です。特産松阪牛は、兵庫県生まれの未経産雌牛を12か月齢までに導入し、生産地だけで900日以上肥育したものです。協議会によると、令和5年度の出荷は松阪牛が約9,100頭、そのうち特産松阪牛が約340頭でした。
神戸ビーフは、協議会の公表で令和6年度に6,820頭が認定されています。年度が違うため、頭数を並べて比べることはできません。

近江牛と米沢牛の条件はどう違う?
三つ目に挙がる近江牛と米沢牛は、どちらも「その地域で最も長く、最後に育てられたこと」を条件にしています。違いは、性別・月齢・等級の決まりがあるかどうかです。
近江牛は、滋賀県内で最も長く飼育され、最後に飼養された黒毛和種の牛肉です。GI 明細書では、肥育中期以降は稲わらを中心に与えることも生産の方法に定めています。性別と等級の条件は GI にはありません。
米沢牛は、山形県南部の置賜(おきたま)地域、つまり米沢市・南陽市・長井市・高畠町・川西町・飯豊町・白鷹町・小国町の3市5町で最も長く最後に飼育された黒毛和種の未経産雌牛です。と畜時に生後33か月以上で、肉質3等級以上であることが GI 明細書の条件です。米沢市によると、月齢の基準は2023年12月に32か月以上から33か月以上へ引き上げられました。

認定近江牛と近江牛
「近江牛」生産・流通推進協議会は、近江牛のうち枝肉格付 A4・B4 以上で、構成団体の会員が生産し、滋賀食肉センターか東京都立芝浦と畜場でと畜・格付されたものを「認定近江牛」として、認定書と認証シールを出しています。
4銘柄の歴史は?
4銘柄とも、明治時代に外国人や大都市との結び付きで名が広まり、戦後から平成にかけて協議会が定義を整えてきました。以下は、各銘柄の GI 明細書と協議会の説明にある範囲の歴史です。
神戸ビーフ
協議会によると、1868年の神戸港開港後、神戸に住んだ外国人が但馬牛を食べたことが名の始まりとされます。定義がなかったため、1983年に生産者・食肉流通業界・消費者が協力して神戸肉流通推進協議会が設立され、定義と「神戸肉之証」の発行、販売店と生産者の指定を始めました。2007年には地域団体商標に登録されています。
松阪牛
GI 明細書によると、松阪地方では但馬生まれの雌牛を役牛として導入し、のちに長く肥育したのが始まりとされます。明治初期には牛を歩かせて東京へ運ぶ「牛追い道中」で名を広め、1935年の全国肉用牛畜産博覧会で名誉賞を受けました。1949年から松阪肉牛共進会が開かれ、2005年の第56回以降は出品牛すべてが特産松阪牛です。
近江牛
GI 明細書によると、江戸時代、彦根藩は牛肉の味噌漬けを「養生肉」として将軍家に献上していました。明治以降は東京・横浜へ出荷され、1889年の東海道線開通後は鉄道で運ばれて「近江牛」の呼び名が使われるようになりました。1951年には近江肉牛協会が設立されています。
米沢牛
GI 明細書によると、1871年に米沢藩校「興譲館」に招かれた英国人教師チャールズ・ヘンリー・ダラスが、1875年に横浜へ戻る際に米沢の牛を連れ帰り、その評判から名が広まったと伝えられています。1899年の奥羽本線開通とともに米沢駅で売り出された米沢牛の駅弁は、明細書の作成時点でも販売されていました。1992年に米沢牛銘柄推進協議会が発足して統一基準が定められ、2007年に地域団体商標に登録されました。

三大和牛はどこで買える?指定店リストの探し方
確実なのは、各協議会が公開している指定店・登録店のリストから探す方法です。リストのある銘柄は、このサイトの銘柄ページからたどれます(2026年11月確認)。
銘柄ページを開く
神戸ビーフ・松阪牛・近江牛・米沢牛の銘柄ページを開き、協議会の名前と公式サイトを確かめます。
協議会の店舗リストを見る
神戸ビーフは協議会の「神戸ビーフ指定登録店」、松阪牛は松阪牛協議会の「松阪牛サーチ」、近江牛は協議会の「近江牛に出会えるお店を探す」で、地域やジャンルから探せます。
店頭で証明を確かめる
神戸ビーフは「のじぎく」の紋章と指定登録店のブロンズ像、松阪牛は松阪牛証明書と松阪牛シール、認定近江牛は認定書と認証シールが目印です。
個体識別番号を照らし合わせる
国産牛には10けたの個体識別番号があります。表示された番号で、生まれた場所や飼われた場所を確かめられます。
米沢牛の指定店リストは確認できませんでした
米沢牛銘柄推進協議会の公式サイトは、2026年11月2日の時点で接続できず、指定店のリストを確かめられませんでした。購入の際は、販売店に GI の表示や証明について直接確かめてください。
つまずきやすいところ
- 「三大和牛」は公式の認定ではありません。三大和牛と書かれていることは、品質や条件の保証にはなりません。
- 「神戸牛」は通称ではなく、GI に登録された名称の一つです。神戸ビーフと神戸牛は同じ基準です。
- GI に登録されているのは「特産松阪牛」で、一般の松阪牛は GI 産品ではありません。
- 近江牛の GI に等級の条件はありません。A4・B4 以上の条件があるのは協議会の「認定近江牛」です。
- 「松坂牛」「まつざかうし」は誤りで、協議会は「まつさかうし」「まつさかぎゅう」のどちらも正しいとしています。
- 三大和牛の4銘柄だけが GI 登録の牛肉ではありません。牛肉の GI は13銘柄あります。
買う前のチェックリスト
- 銘柄名が正しく書かれているか(神戸ビーフ・神戸肉・神戸牛、松阪牛、近江牛、米沢牛)
- 協議会の指定店・登録店のリストに載っている店か
- 証明書・シール・紋章など、協議会の証明があるか
- 個体識別番号が表示されているか
- 等級の表示がある場合、銘柄の条件と合っているか(神戸ビーフは肉質4以上、米沢牛は3以上)
- GI マークがある場合、地理的表示の名称とセットで表示されているか
まとめ
- 「三大和牛」を定義した公式の文書は、国の GI 制度や協議会の定義の中には見つかりませんでした(2026年11月確認)。
- 神戸ビーフと松阪牛は共通し、三つ目は近江牛と米沢牛の2つの言い方が混在しています。
- 4銘柄はすべて黒毛和種で、性別・肥育地・月齢・等級の条件はそれぞれ違います。
- 格付の条件があるのは神戸ビーフ(肉質4以上・BMS No.6以上)と米沢牛(肉質3以上)です。
- 買うときは協議会の指定店リストと証明書・シール、個体識別番号で確かめます。
よくある質問
三大和牛はどこが決めたのですか?
農林水産省の地理的表示(GI)の資料や各協議会の定義を確かめた範囲では、三大和牛を決めた文書は見つかりませんでした(2026年11月確認)。観光案内や銘柄の紹介文で使われている呼び名です。
三大和牛の三つ目は近江牛と米沢牛のどちらですか?
どちらの言い方もあります。観光庁の多言語解説文データベースは近江牛を、米沢牛の GI 明細書は米沢牛を、日本三大和牛として紹介しています。決める基準がないため、どちらが正しいとは言えません。
神戸牛と神戸ビーフは違うものですか?
同じものです。GI 第3号には「神戸ビーフ」「神戸肉」「神戸牛」「KOBE BEEF」の4つの名称が登録されており、条件は同じです。
神戸牛と松阪牛の違いは何ですか?
神戸ビーフは但馬牛を兵庫県内で肥育し、肉質4等級以上・BMS No.6以上などを満たした未経産雌牛と去勢牛です。松阪牛は松阪牛生産区域で最も長く最後に肥育された黒毛和種の未経産雌牛で、等級の条件はありません。
三大和牛はすべて GI に登録されていますか?
神戸ビーフ(第3号)、特産松阪牛(第25号)、米沢牛(第26号)、近江牛(第56号)が登録されています。松阪牛は、GI に登録されているのが「特産松阪牛」だけである点に注意してください。
三大和牛の味に順位はありますか?
このサイトでは味の順位はつけていません。各協議会がそれぞれの特徴を紹介しているので、銘柄ページで協議会の説明を確かめてください。
三大和牛はどこで買えますか?
神戸ビーフ・松阪牛・近江牛は、協議会が指定店・登録店のリストを公開しています。米沢牛は協議会の公式サイトに接続できず、2026年11月時点でリストを確認できませんでした。
出典・確認日
9件
- 農林水産省「登録産品一覧」(地理的表示保護制度)(2026-11-02確認)
- 農林水産省 GI 第3号「神戸ビーフ」登録の概要(2026-11-02確認)
- 農林水産省 GI 第25号「特産松阪牛」登録の概要(2026-11-02確認)
- 農林水産省 GI 第26号「米沢牛」明細書(社会的評価の欄)(2026-11-02確認)
- 農林水産省 GI 第56号「近江牛」明細書(2026-11-02確認)
- 観光庁「地域観光資源の多言語解説文データベース」近江牛(日本語版)(2026-11-02確認)
- 神戸肉流通推進協議会「神戸ビーフ指定登録店」(2026-11-02確認)
- 松阪牛協議会「松阪牛サーチ」(2026-11-02確認)
- 「近江牛」生産・流通推進協議会「近江牛を味わう」(2026-11-02確認)
制度・条件は変わることがあります。購入の前に、公式の最新情報を確認してください。
写真のクレジット(5点)
- 神戸ビーフ:Zairon/CC BY-SA 4.0
- 松阪牛のスライス:Schellack/CC BY 3.0
- 近江牛:Syced/CC0
- 米沢牛のステーキ:Totti/CC BY-SA 4.0
- 但馬牛:Japanexperterna.se/CC BY-SA 3.0